CD review 3

さて,今日は最後の1枚を紹介。
3枚も一緒に買うと,やっぱり1枚くらい(音楽的に)勉強もしないと…ということで,選んだのがコレ。
 
『The Way Up』Pat Metheny Group
ザ・ウェイ・アップ(初回)
PMGの作品は『Imaginary Day』しか聴いたことがない自分に,このような作品のレビューを書く資格はないかもしれないけど…まぁここでは,純粋にシロウト的感想ということでご容赦願いたい。
…アルバム1枚,トータル約68分(日本盤は約4分間のパートを加えた72分)まるごとが“1曲”という,非常に実験的かつ先鋭的な作品。CD上では4トラックに分割されているが,それはあくまで便宜上のもので,音楽的な区切りとは無関係とのこと。
 
序盤は,まるで“現代版Jazzシンフォニー”…その緊張感溢れる展開は,みるみる聴き手を作品のなかへと誘い込む。
様々に形を変えつつ繰り返される複数のモチーフ,12本のギターを駆使した(これでも“少なめ”とか)緻密で繊細なサウンド…ギターという楽器に,これほどの表現力と可能性があることに改めて気付く。そして驚くのは,この70分にも及ぶ楽曲に,ほぼ完全なスコアが存在するという事実。Jazzというと即興演奏のイメージも強いが,これはむしろ現代音楽の,それも最先端の手法に接近している。
 
「これは“protest music”なんだ」(protest=抗議,主張)
メセニー本人がそう語るこの作品には“軽薄短小化,白痴化の進む世界”への反発心も込められているという。音楽の聴き方にしてもそう。今やすっかり,iTunesで曲単位で音楽を購入(日本はまだだけど…)してシャッフルし,iPodに放り込んで…というスタイルが定着しつつある。でも本当にそれでいいのか。何でもお手軽がいいとは限らないし,mp3などの圧縮音声ではなく,フルクオリティのサウンドに正面から向き合って初めて得られるものもある。
 
そういう意味で,この作品は聴く人を選ぶかもしれない。もちろんメセニーが言うように「聴き流してくれてもいいし,聴き方は(その人の)自由」なのだけれども。
ライナーに書かれているコメントによると,音楽の“熱心な聴き手”になるのは,全人口の2%くらい…という統計があるそうだ。
たまには,ちょっと背伸びして(?)その“2%の世界”を覗いてみるというのも…悪くないのではないだろうか。