『Octavarium』Dream Theater

オクタヴァリウム
 
あのお方の新譜がなかなか出ないので(笑)待ちくたびれてつい。いや,今回は結構イケそうな気がしてたので。
その“あのお方”をはじめ,数々のアーティストが名盤を生み出してきたNYのHit Factoryスタジオが閉鎖され,その最後のレコーディングとなったのが今作という,ちょっといわくつきのアルバムでもある。
 
個人的には4枚目の『Falling into Infinity』以来だから,かなり久し振りなのだが…もはや彼らにしか創り出せないと思わせるほどの,深遠かつ濃密な75分。
今回は楽曲がバラエティーに富んでるというか,1曲毎にそれぞれ違ったDream Theaterを聴かせてくれる感じが楽しい。“I Walk Beside You”で突如U2モードに入ったかと思えば(笑)“Panic Attack”では高速変拍子&メトリックモジュレーションの連続コンボで文字通り聴き手をパニックに陥れる。ラストはもう十八番ともいえる24分の超大作。一時期Genesisなんかにもハマってた自分にとっては,懐かしさすら覚える構成&演奏(の見事さ)である。
 
確かに,もはや初期(とりわけ2nd)のような,万人向けのわかりやすさはない。でも誤解を恐れずに言えば,彼らにそれを求めるのは間違っている。ちょっとの辛抱が必要かもしれないが,その音楽に耳を傾ければ,彼らこそ真のミュージシャンシップを備えた本物のアーティストであり,クリエイターであることがわかるはずだ。
たまにはこういうものも聴かなきゃ,耳が腐っちゃう。そんな,創作意欲を刺激される1枚でもある。
以前紹介したPat Methenyの最新作のように,ある意味これも“プロテスト・ミュージック”の一種と言えるかもしれない。もっとも彼らの場合,単に好きなことをやりたいようにやってるだけ,なのだろうけど…