『A Dramatic Turn of Events』Dream Theater

Dramatic Turn of Events

Dramatic Turn of Events

「音楽の贈りもの」(ただし,ちょっと難解な)

バンドの「核」だったマイク・ポートノイが去ってもなお…Dream Theaterは,真にクリエイティヴでプロフェッショナルな音楽集団としての存在意義を,これっぽっちも失ってなどいない。
そのサウンドからは…過去を否定せず,真摯に現在と向き合い,未来への一歩を踏み出そうとする,ポジティヴな姿勢が伝わってくる。

近年の作品のなかでも,音の「密度」の高さ,濃さという意味では群を抜いている。
アレンジもより緻密になり,とてもじゃないが,一,二度流した程度で曲を覚えられるようなシロモノではない。今作も,10分を超える曲が4曲。聴く側にも相応の覚悟が必要だ。何だか,途中でトイレに行くのも申し訳ないような気分になってくる(笑)
だから時々,あの「Wither」のイントロで聴けたような,ポートノイの「遊び心」が…ちょっと恋しくなったりするところもあるけれど。ペトルーシは,きっと「真面目な」人なのだ。

ジョーダン・ルーデスが全編にわたって「鍵盤の魔術師」ぶりを遺憾なく発揮しているのも嬉しいところ。
まさに,今年生誕200年を迎えたフランツ・リストが…現代に舞い戻ってきたかのよう!

クリアーで分離の良い音像が,4人それぞれの「聴かせどころ」をくっきりと浮かび上がらせ,新加入のマイク・マンジーニの的確なドラミングがそれをフォローする。
ある意味では,バンド本来の「正当なバランス」を取り戻した…とさえ言えるのかもしれない。


個人的な話で恐縮だが,いまちょっと,iTunes Storeを使えないマシン環境になってしまってて,やむなく今回はCDを購入したのだけど…結果的には正解だったかもしれない。
音楽が,作品としての価値をどんどん失いかけて,単なる「情報」としてやり取りされることが多くなってきたこの時代に…これほど丹念に作り込まれた質の高い音楽を,70分余りのCDという媒体のなかに収めることのできる,本物のアーティスト,ミュージシャンと呼べる存在が,果たしてどれほどいるのだろうか!?
自分も,これは,家ではCDで聴こう…と,久々に思った「作品」である。

Dream Theater=マイク・ポートノイ,だった人に,今作がどう映っているのかはわからないけれど…ある意味拍子抜けするくらいに(?)彼等はこれっぽっちも変わっていないのではないか,と思う。
あくまでも「音楽そのもの」に向けられたそのエネルギー。それが失われない限り,少なくとも自分にとっては…Dream Theaterは,これからもDream Theaterであり続ける。そのことを確認できただけでも十分だ。

Keep on Rockin', Stay with MUSIC!!