外伝4リプレイSS episode#2「再会」

「Dragon's Cave」
 
城塞都市リルガミンの外れに,人知れずひっそりと佇むその洞窟の存在を知る者は,ごく僅かであった。
その名の通り…まさに神の如き力を持つ,強大な竜族の住処。
 
そこに…四人の冒険者の姿があった。
 
扉の向こうにいたのは,全身を光り輝く鱗で覆われた,一体の巨大な竜。
その,天井にも届くほどの身体が,上の方でゆっくりと動き,侵入者へと向き直る。
全てを射抜くかのような,鋭い眼光。常人ならば,その一瞥だけで命すら奪われているであろう。
戦いが…始まった。
 
「ダメ…全然効いてない!!」
あらゆる武器や魔法が…ことごとくその黄金の鱗に弾き返されていた。もはや「苦戦」などという言葉も虚しいほど,その戦力差は圧倒的ですらあった。
「くっ…また,逃げ帰るしかないの!?」
 
「やはり…これしかないか。」
ローリーが,聖剣エクスカリバーを…鞘に収めた。
そして,静かに目を閉じ,精神を統一する。
 
「ベーアリフ(BA)…ミームザンメレー(MOR)…ダールイ(DI)…!」
 
異界の魔物を呼び出し,術者に忠誠を誓わせる召喚術。高度かつ,危険な魔法でもあった。もし,自身が制御しきれないほどの強大な魔物を呼び寄せてしまったら…その「契約」は破られ,術者の破滅を招くばかりでなく,更に恐るべき事態を引き起こす可能性すらあった。
眼前に,複雑な紋様の描かれた円形の魔法陣が現れる。その紋様は徐々に光を帯び,やがて円柱となって立ち昇る。
光が消え…浮かび上がった幻影が実体化する。
 
「フフフ…苦労しているようだな。」
 
「…お,お前は!!」
 
その蒼白な面立ちには…見覚えがあった。
「あの…古の洞窟で!」
 
「如何にも。我こそは不死の王,バンパイアロード。
 改めてゆっくりと挨拶を交わしたいところだが…そうもいかんぞ!」
金竜が…再び四人に襲いかかろうとしていた。
「今のお前達には,このドラゴンは正攻法で倒せまい。
 ならば…知恵を見せてみろ!」
バンパイアロードはそう告げると,金竜と四人の間に立ちはだかった。
 

 
「ラーアリフ(LA)…ベーアリフ(BA)…ダールイ(DI)…!!」
 
四人は,ここまでで初めてと言ってもよいほど,徹底した魔法戦へ持ち込んでいた。
そして遂に…ローリーの魔法が通じた。生命力を奪い取り,いかなる強敵をも瀕死に追い込む…禁断の秘術。しかし,此処にはもはや「聖域」などは存在しなかった。
No sanctuary.
あらゆる手段を用いなければ…此処から生きて帰ることなど,到底不可能なのだ。
 
残された最後の力で,四人を道連れにするべく襲いかかる金竜に,ローリーが再びエクスカリバーを構えた。しかし…
「か…かすりもしない!!」
残る三人の攻撃も…敢えなく空を切った。
「こ…ここまできて…!」
その表情に…焦りと,悔しさが滲む。
 
「フッ…やはり,まだまだのようだな。」
 
背後から突然現れたのは…バンパイアロードだった。
その冷たい掌が触れると…黄金の鱗は輝きを失い,凍りついた。そしてそれは,瞬く間に全身に広がっていく。
金竜は,壊れた氷細工のように崩れ落ち,おびただしいほどの蒸気を発したかと思うと…跡形もなくその場から消え去った。
その光景を…ただ眺めるしかなった四人。
バンパイアロードの姿は…既にそこにはなかった。
辺りを,再び静寂が支配していた…
 
...to be continued!?(笑)